魔の微笑

ホラー映画が流行る時は世の中があまりよろしくない時代などと昔は言はれた。今も十分によろしくない時代だと思ふが、現実が映画を超へるほど混沌とし、疲弊しきつてしまつてはホラー映画など出る幕がないのかもしれない。ホラー映画の肝はいかに人を怖がらせるかに尽きる。その為、大抵は気持ち悪い怪人だとかが出てくる。僕はあの手の映画が好きではないので殆ど観たことがない。思ひ出せるのは「キヤリー」「オーメン」「シヤイニング」の3本だけである。この中で一番恐ろしく、尚且つ衝撃的だつたのが「オーメン」である。主人公の少年の笑ひ顔に恐怖を感じた覚へがある。凶暴な犬に追ひかけられたり、鉄柱が体に突き刺さるシーンよりも何よりもあの笑顔がとてつもなく気持ち悪く怖かつた。恐ろしい笑顔もあると知つたのは多分あの時だらう。最近では厚労大臣に同じ恐怖を感じてしまふ。彼女は役者ではなく元アナウンサーだが、人が嫌がることをニコニコしながら平気で喋る。痛む傷口に笑いながら塩を塗り込む姿は僕にとつて恐ろしいことこの上ない。ダミアンの演技以上にホラーを感じる人である。