63年目の夏

最近続けて廓に関する本を読んだり、映画を観たりした。映画は蜷川実花氏の初メガホンとなる「さくらん」。内容はともかくとして彼女らしい色使いが随所に散りばめられていたのが印象的な映画だった。本は「廓はなし」、著者はお馴染みの宇野信夫氏。「さくらん」の中で木村佳乃扮する花魁”高尾”が「わちきは思ったとおりに人を動かす。それを手練手管という」と言う台詞があるが、宇野氏の本の帯には「女(遊女、花魁)の手管、それに応える男(侠)の粋」とあり、男と女の駆け引きの見方の違いが興味深い。さて、花魁が活躍した時代からもう少し時計の針を進めてみる。15日で戦後63年経った。何年か前にある女性から聞いた話をご紹介する。彼女は昭和一桁生まれ。終戦の時16,7才で女学校の生徒だった。近所に進駐軍の兵士相手に体を売っていた女性達がいたという。彼女達は「パンパン」と呼ばれていた。蔑まされた存在だった。しかし年頃の娘たちはその女達のお陰で自分たちが助かったという。僕にその話をしてくれたその女性は遠くを見るような目でそう話してくれた。 残念ながら僕は観たことがないのだが、毎年この時期になると横浜のレンガ倉庫で女優の五大路子氏のひとり芝居「横浜ローザ」が上演される。