高田馬場にて Ⅱ


高田馬場から線路沿いに戸山公園に向かう途中にリベラル中村という婦人服の会社があった。今回その建物を探してみたのだが、どうも今はないらしい。僕はかつて百貨店の納品の仕事をしていた時期があり、婦人服のメーカーや問屋について多少の馴染みがあった。毎日バーゲン商品やプロパー商品を扱っていたので、その当時はタグを見なくとも生地を見ればおおよそのデパート価格が分かった。タグや箱の隠し値札の読み方を知り、百貨店での流通の仕組みなどの知識を得た。メーカーの営業が売り込み、百貨店のバイヤーが買い付け、発注し、メーカーは伝票通りの仕様にする。納品代行業が集荷し、商品センターまで運び、検品を受ける。検品された商品は各フロアー毎にまとめられ、関連する配送会社が百貨店までピストン輸送する。店舗に着いた商品はそこから各売り場まで運ばれてやっとお客の目に触れるようにディスプレイされる。今の時代はメーカーから直接仕入れて問屋などの中間を省く商売が大流行というか当たり前になっているが、当時は簡単に説明してもそんな流れだった。人手も手間もかかるので当然商品の単価は高くなる。だが、それにより多くの仕事が確保されていたのは間違いない。安い高いはあるだろうが、毎月それなりに収入があり、ボーナスもあり、生活することが出来た。僕は今よりもその頃の方がシステムとしていいのじゃないかと思っている。  この界隈をぶらっと歩きながら撮影しているとホームレスと思しき人が自販機の前にいた。カンを入れるゴミ箱からアルミ缶を探しては足で踏み潰し、大きなゴミ袋に貯めていた。