はだしのゲン

はだしのゲン」の作者である中沢啓治氏が漫画家を引退するという。視力が衰えたことが理由らしい。僕が氏の漫画を初めて見たのは小学生の時だった。週間少年ジャンプに「はだしのゲン」は連載された。当時の週間漫画誌では到底考えられない内容の漫画に衝撃を受けたのを今でも覚えている。それから十数年後、ひょんなことから氏と顔見知りになる機会を得た。お酒と歌の好きな人で三橋美智也や青木洸一などを好んで歌っていた。その当時から漫画より講演や舞台の方の仕事が多かった。そんな縁で僕もミュージカルや講談、映画を観に行った。氏について戦争や原爆を売り物にしたというような批判的な声もあったのは事実だ。あの記憶を思い出したくない人も大勢いることだろう。だが辛いなどという薄っぺらな言葉では言い表せないほどの経験を誰かが伝えていくことには大いに意味のあることであることは疑いようがない。実際僕等の世代はあの漫画で原爆を知るきっかけになった。小学生にとって文や写真よりも漫画と言う馴染みある形式は導入部としてはうってつけだったように思う。今後は好きな油絵を描いていくという。次回作を見る事が出来なくなったのは少し淋しい気もするが先ずはお体ご自愛下さいと伝えたい。