1歳の記憶

ごくたまに1歳や2歳の頃の記憶があると言う人がいる。僕なぞは昨日の夕飯さえ思い出せないことが多々あるのでそういう話を聞くと「ほんまかいな」と疑ってしまう。そういう記憶力抜群な人はその頃のことを何から何まで覚えているわけではなく1シーンとか2シーンを覚えているらしい。それも日記や写真といった材料に補完されることなく記憶しているというのだから凄い。僕らの子供時分にも親は子の写真を撮った。だが今ほど日常的に子にレンズを向けるということはなかったように思う。記録媒体はフィルムであり、カメラも今ほどプログラム化されていないマニュアルのものが殆どだった。ママが気軽に撮れるほどカメラは小さくなく軽くもなかった。差別するつもりはないがカメラメーカーは女性の使用を想定していなかったと思う。カメラは男の道具だったのだ。ところが今はフィルムカメラを使う人は激減し、殆どがデジタルカメラである。フィルムの残り枚数を気にすることなく連写出来る。不要なものは削除すればいい。データの保存はPCのハードに入れたり、CDに焼いたり、DVD化したりすることが出来る。そこには昔、額を寄せ合って出来上がったプリントを見た光景はない。家族揃って大型液晶テレビに映る映像を見るというスタイルが定着しつつある。子供は総じてテレビやビデオが好きである。そこに自分や親、友達などが映っていれば喜ばない筈がない。同じものを何度でも観たがる。繰り返し見たものは一度見たものよりも記憶に残りやすいだろう。こうして補完された記憶を持つ子、つまり0歳の頃、1歳の頃の記憶がある子がこの先増えることだろう。