MAMIYA SUPER DELUX 48/1:1.5

知人の父上からカメラを戴ひた。MAMIYA SUPER DELUX 48mmF1.5といふレンズシャッター機では世界初となる大口径レンズを搭載したカメラである。資料によると1964年11月に発売されたものである。新婚旅行に持つて行くために購入したといふことで当時の月給1月分くらいしたと笑つて話してくれた。彼は以来ずつとそのカメラを使ひ続けてきた。家族でどこかに行く時はいつもこのカメラがお供した。アンバーがかつたコーティングのこの「目」は46年間彼の日常や特別な日を見てきたのである。手入れもよく行き届ひてゐて大切にされてきたことが判る。思い出のカメラを頂戴するのは気が引けたので何度も固辞したのだが、「最近では流石に重くてしんどくなつてきた。飾つておくよりも使つてくれる人がゐればカメラもその方が喜ぶ」と言われ有難く持ち帰つた。複数のカメラを所有し、それなりの理屈も御託も並べることの出来る僕ではある。けれどもこういつたカメラの使ひ方をしてきた人にはまるで頭が上がらない。嫉妬心さえ覚えてしまふ。生意気で青臭い自分を思ひ知ることになるのだが、尊敬出来る大人の前ではそんな僕も自然と素直になれるのだつた。