フイルム讃歌

先日、近所のお宅に咲くハナミズキを写真に撮らせてもらつた。庭に小さな鯉幟のある家だつた。お孫さんのためかと思つたら飼い犬用だと言ふ。撮影の邪魔になつてはとわざわざその鯉幟を退けてくれるやうな親切な人だつた。ミノルタのα9にアグファのカラーフイルムを詰めてマクロで撮つた。36枚撮りのうち10枚くらいを費やした。残りは連休中にスナツプを撮つた。上がつてきた写真を見ると今更ながらにデジタルとフイルムの違いに気がつく。フイルムで撮つた写真には人物の瞬き、つまり目を瞑つた写真が一枚も無いのである。フイルムだとやはり気合の入れ方がデジタルのそれとは違う。無駄なシヤツターを切らない。一枚にかける時間も集中力も比較にならないのだ。暫くカメラを使はないと中判以外は総デジタル化しやうかななどと思ふ時がある。だが、かうやつてプリントを見てみるとさういう気持ちはたちまち失せる。細々とではあるが、まだまだ僕は銀塩を続けていくだらう。