餅屋を殺すな!

α9で撮つたハナミズキの四つ切が上がつてきた。予定よりも一日遅い仕上がりだつた。勿論その旨の連絡は貰つてゐた。遅れた理由はラボの人がだうしても色に不満が残ると言つてプリントをやり直した為である。頭が下がるプロの仕事である。流石に上がってきたプリントの色は申し分ないものだつた。淡いピンクの色がなだらかに溶けていくのを見ると下手な写真も何か巧くなつたやうな気がしてくる。デジタル全盛の今の時代、ラボの経営はさぞかし大変だらうと思ふ。写真を焼いてくれる職人さんを確保しておきたくても仕事が少なくなればさうも言つてられない。写真に限らず何事もさうなのだが、時代とともに技術は進歩し、より便利にはなる。新しい仕事も生まれる。だが、新規の仕事が生まれるよりも既存の仕事がなくなつてしまふことの方が多い。一つの仕事を細分化してそれにぶら下がるやうにして成り立つてゐた人々がスポイルされて行く。餅は餅屋といふ言葉がある。僕らは誰もが餅屋に成り得てしまひ昔から餅屋をやつてゐる人を必要としなくなりつつある。果たしてそれでいいのだらうかと思う。新しい技術は多くの人を幸せにしてくれるものでなければウソである。使ふ人の利便性も重要だが、人から仕事を奪つてしまふやうな技術であつてはならないと思ふのだ。綺麗事ばかりを言ふがエンジニアや経営者にはさういつたコンセプトで新しいモノを作つて欲しいと思ふ。