シンプル

自転車に乗る効能は幾つもある。どれも順番は付け難いが今日はその中でも「シンプル」をキーワードにして考へてみる。自転車の動力の源となるものは自分である。同じ自転車に乗つても人それぞれ体力、脚力、体重が違ふ。車やバイクは同車種、同排気量であれば馬力は同じだが、自転車は同じにならない。自転車に乗る時は出来るだけ軽量である方が動力源である自分への負担が少ない。日帰りツーリングであればタオル、お金の2点あれば間に合ふ。理屈はさういつたことになるのだが、実はこれが僕のやうな性格の人間が乗り越へるには難関だつた。僕は意味もなく(本人は意味があると思つてゐるのだが)心配性なのだ。どこかに出かける際にあれもこれもと持つて行きたくなる。ありもしない様々なシーンを想像し、それに備へたくなつてしまふ。さうしないと不安なのだ。だからいつも荷物は大きく、重い。苦労して荷物を多くしてゐる割にはその甲斐があつたことは少ない。車や電車での移動ならば荷物はバツク・シートや網棚に置けば済む。だが自転車ではさうはいかない。デイ・バツグ一つにしても背負つて乗ればいずれ背中に熱がこもつてくる。容量が大幅に減るヒツプ・バツグが精々である。だから持ち物の厳選してシンプルにする必要がある。努力の結果、お金(五千円ほど)タオル、タバコ、コンデジ、携帯まで絞り込むことが出来た。この中からあと一つお供を減らすとすると携帯電話が先ず候補に挙がる。身軽で自由になれる自転車。本来は一番最初に留守番役にさせなければならなかつたモノである。自分の知力、体力だけを信じ、100gちよつとの携帯が邪魔に思へるやうになる日は何時だらう。