「島破り」石月正広 著

引き出しの中を整理したら図書券が出てきた。500円券が3枚あつた。普段は古本ばかりを物色する僕なのだが、この券が出てきたことでたまには新品の本を買ふ気になつた。平積みになつてゐた本の中に石月正広の「島破り」といふ文庫があつた。幾冊もある中でこの本を選ぶのは直感である。本を読むのが習慣になつてゐる時はこの直感が当たる。反対に久しく読書から離れてしまふと直感は働かないばかりか外れを引くことになる。未だに理屈は分からないのだが、実体験として本を読み続けてゐるといい本に巡り会ふ。書店で数ある本の中から一本釣り出来るのだ。何冊かまとめて買つても雑魚や外道はないのだから不思議である。電子書籍の時代になつたら実物としての本がなくなるのだらうか。だとすると僕の直感に基づいた本の買ひ方は出来なくなる。せめて僕が生きてゐる間は紙の本はなくならないで欲しい。ところで「島破り」だが、実に面白い時代小説である。中、短編集になつてゐる本なのだが、中でも「寄物」がお勧めである。ネタばれになつてしまふので内容はここでは明かさない。是非一読されたい。