ある男のこと

受賞のスピーチで話題になつてゐる人のことが、僕は好きになれない。いや、嫌ひである。彼のことを僕はまるで存じ上げないのであの一件での印象、判断である。彼をどんな言葉に置き換へたら腹に収まるだらうか。皮肉屋、孤高の人、偏屈、エトセトラ。然し、どれにしてみたところで板に付いてない。付け焼刃なのだ。つまり生き方を反映したものではない。ヒールを演じて話題を作り、本の売り上げは上々。作戦成功といつたところか。本人の自作自演なのか、出版社が絵を描き、台本通りに演じたのかは知らないが、僕には素直になれない小さな子の姿が重なつてしまふ。