「渡世人」石月正広 著

本を話題にしたのは十月ほど前だらうか。石月様からコメントを頂戴したのが最後だつたやうな気がする。その後、ある本を読み始め、躓き、暫くの間読書から遠ざかつてゐた。その原因となつた本は「透明人間の告白」といふSF小説。これは過去三十年間のベスト1と評された本である。(何処の誰が投票して決めたのかは失念した)上下巻からなる小説なのだが、読ませる所に辿り着くまでが異常なほど長い。話によると下巻の半分以降が面白くて、それまではひたすら登り坂が続くらしい。そんな基本情報は前もつて知つてゐたので覚悟はしてゐたのだが、途中でへばつた、飽きた。そして投げ出されて積読になつた。一度こんなことになると暫くの間本を読む気がしなくなる。途中で止めたのが悔しくて次の本に手が出なくなるのだ。三月で気が晴れることもあれば、今度のやうに長くかかる場合もある。そんな具合で今回はかなりの時間本から遠ざかつてゐた。 トンネルを脱出させてくれたのは石月正広氏の「渡世人」だつた。 続く