リサイクル・シヨツプで


 他人に「君は利口か?」と訊かれれば、謙遜ではなく「違ひます。どちらかと言へばバカな方です」と返事する。が、「君はバカか?」と言はれれば、むつとして「僕はバカではありません」と即答する。訊かれ方によつてまるつきり反対の返答になるのは理屈では矛盾だが気持ちは分かる。で、何の話かと言へば、先日初めてリサイクル・シヨツプに着なくなつた服を売りに行つた時のこと。ジヤンパーやらコートやらジヤケツト、パンツなど30枚ほどを持ち込んだ。行く前には、ただでもかまはない、捨てるよりはマシ、そんな気持ちだつた。車のトランクから3往復して査定カウンターに置くと、オニヤンマの様なメガネをかけた愛想のない女店員がだらだらと束になつた洋服の紐を解く。3,40分してやつと査定が終はり査定額を見せられてびつくりする。250円!そんな値段を付けられると「君はバカか」と言はれた気持ちになる。僕の洋服の束をぱつと見て付けられた値段ならばまだ許せる。おまけに持ち込んだ殆どの服が買ひ取り不能。処分も引き受けないので持つて帰れと突つ返された。元々高く買つてもらふつもりはなかつたものの何だか腹が立つ。捨てるよりマシの気持ちが捨てた方がマシに変はる。それでもこのまま持ち帰り捨てるのも癪に障る。そこで僕よりも貧乏人のKに進呈した。僕にすれば処分品だが、Kは想像以上に喜んでくれた。こんなことなら初めから奴にくれてやれば良かつた。リサイクル・シヨツプでは面白くなかつたが、僕の着古しは無駄にならずに済んだ。終はりよければ全てよしと思ふことにする。