ヒミツ


人の口に戸はたてられない。
この話は墓場まで持つていく。
ここだけの話と断つた筈の話が、巡りめぐつて自分のところに戻つてくる。
誰でも一生の間に秘密を幾つか持つ事はあるだらう。
時間と共に秘密を秘密にしておく意味がなくなり、白日の下に晒された時には
一体何を隠したかつたのか分からないなんてこともあるだらう。
確かロシアのユーモアだつたと思ふ。
大統領だか首相だか書記長だか(名前は失念した)のことを指してバカだと言つて当局に捕まつた。名誉毀損だか、侮辱だかの罪かと思つたら国家の重大な秘密を暴露した咎だつた。
秘密であるか否かは普通当事者がその判断をする筈だが国家機密になるとその判断は行政がすることになる。自分は秘密だと思はなくともお国が秘密だつたと判断すれば秘密を暴露したことになつてしまふ。何とも恐ろしい話である。
こんな話は是非とも廃案といふ墓場に持つていつてほしい。