富くじ考

 僕にはまるきり実感がないのだが、世間の景気は上向きらしい。少し前までは
派遣、年収二百万だのといつた見出しが新聞を賑わせた。それが最近ではあまり聞かなくなつた。その話題には飽きてしまつたのか、それとも本当に好景気なのか。
 この時期の話題のひとつに年末ジヤンボ宝くじがある。今回は一等、前後賞を合はせると七億円になる。年収七百万円の人でも百年暮らせる計算だ。三百五十万円の人ならば二百年。売り上げ増を狙つての高額当選金なのだらうが、果たしてこんな金額にしてよいものだらうか。七億円一本よりも一億円を七本にした方が良くはないか。更に五千万円を十四本にすればより多くの人が一時金持ちになれるぢやないか、と僕は考へる。一枚三百円といふのも高すぎる気がする。あんなものは百円がいいところだ。タレントを使つてやたらと射幸心を煽るCMもいかがなものか。詳しくは数学の得意な人に任せるとして、以前僕が読んだ本によると宝くじで一等を当てるのは交通事故で死ぬことよりも確率が低いさうだ。それを黄色がラツキー・カラーだの、どちらの方角が吉だのとまるで再現性のないオカルト話をするのもいけませんねえ。