日本の中心で無知を叫ぶ

「医者は常識がない」といった発言を謝罪したばかりの麻生首相。今度は「何もしないでちんたら飲んだり、食ったりして病気になった人間の医療費を何故俺が払うんだ」と息巻く。そこに飛びつくマスコミの集中砲火を受け、またまた謝罪。首相の本意は「普段から健康増進に努めてくれよ」というものなのだろうが、マスコミはそんなことは分かりきった上で敢えて面白可笑しく報道するのが仕事。まるで捕まえたネズミをいたぶる猫の如く政治家を左右前後に転がして遊ぶ。さて、それにしてもお粗末な発言が続く政治家センセ達だが、僕は彼等のこういった所謂不用意発言を少し歓迎している。何故か。それは不用意発言からその政治家の意識や人柄が垣間見られるからだ。例えば先日の二階経産相の発言。医師不足、それによる医師の過酷な就労の現状について「医者になるにはそれなりに覚悟してなったんだろう。つべこべ言わずに働け」的な内容のものだった。あまりにも実態を知らない発言だろう。僕の知り合いに医療関係のコーディネートをしている人がいるが、地方では本当に医者がいないらしい。1年契約で破格の報酬を約束しても首を縦に振らないという。現場を知っている彼等は行ったらどんな過酷な状況になるか分かっているのだ。例えば医師が30人いる病院に赴任すれば、当直は月に1回。15人のところならば月2回。誰もいない病院に行けば毎日当直し、昼間の診療もしなければならない。医師の体も持たないし、十分な診療行為など不可能だろう。政治家が現実や現場を知らないということは何が問題なのかという認識さえ持ちえていないことの証明だろう。つまり何もせずに歳費を貰っているのだ。時代劇「水戸黄門」のように身分、素性を隠して全国津々浦々を視察せよというのは無理な話だが、せめて自分が病気になった時、医療過疎が進む地方の病院に敢えて入院してみたらどうだろうか。その際は勿論身分素性を隠すだけではなく、我々と同じように救急車を呼び、「医者がいない」「ベッドに空きがない」といった理由で受け入れてくれない状況を十分に味わうことも体験してほしい。そして自らの体で得た貴重な体験を政治に生かして頂きたい。