Speed


今の便利な生活に慣れ親しんでいる僕がこういった話をするのはこれからの若い世代や生まれ来る子供達からすれば「既得権益を持ち十分甘い汁を吸った者の建前論」としか聞こえないだろうし、僕自身もアン・フェアなことだとは十分承知しているつもりだ。だが敢えて感じたことを書いてみる。何の話かといえば世の中のスピードの事である。
終戦から数えて今年は64年。あっという間の経済発展は僕等の生活を便利にした。多くの人が懸命に働き勝ち取った結果であることは認める。僕等はその恩恵にあずかりながら成長し、生活を謳歌してきた。そして気が付けば「働き盛り」などといわれる年齢になっていた。「走り続けてふと後を振り返れば・・・」などと格好のいい事を言うつもりはないが、僕等も僕等の先輩達も少し速く走りすぎたのでなないだろうかと感じるのだ。急激な発展や発達のもたらしたものはごく限られた世代の人間には多くの果実を与えてくれた。もっとゆっくりと歩くように進んでいったならば得る果実は少なくなっても次の世代の人間に収穫を分けてあげることが出来たのではないか。科学も経済も社会のシステムも僕等は獲れるだけ獲ってしまった気がする。次世代の人々には収穫出来る果実を残さずに出涸らしだけになっていないか。人の世が何時まで続くのかは分らないが少しでも持続可能な世の中を彼等に渡さなければならない。あまりに速いスピードでここまで来てしまったような気がしてならない。