時泥棒

江戸時代の言葉に『時泥棒』というものがある。ことわりもなく突然訪問して相手の時間を奪ってしまうことをいうらしい。これが結構な大罪らしく10両の罪とものの本にある。江戸しぐさ、つまり当時のエチケットの中のひとつなので実際時泥棒されたといって奉行所に訴え出るということはなかったのではないかと思うが、10両盗んだら死刑を言い渡される時代だからかなりの非礼と考えられていたと推察される。時の流れとともにこういった相手を慮る気持ちはだんだんと薄れてきて人同士が気持ちのいい距離でいることが難しくなってきている。人と人の関係において大概のことは許されるようになるまでは相当な時間とお互いの努力が必要の筈だが、そういったものを構築しないままズカズカと他者のエリアに入り込んでくる輩が多い。まるで本能のままに突っ走るものだから悪意はないのだが、その代わり相手に対する優しさもない。困った人はいつの世にもなくならない。