羽田発一番機の攻防

32年ぶりに羽田から国債定期便が飛んだ。記念すべき第一便を懸けてJALANAで面白い競争があつた。それは予定の時間を繰り上げて飛行機を飛ばし、相手を出し抜かうといふものである。最初にそれを計画したのはANAだつたさうだ。それを聞き知つたJALが対抗し、結局はJALに軍配が上がつた。無線で連絡を取り合ふ職員が免税店で買い物をする旅客を急いで飛行機に乗せるといふ一幕もあつたと聞く。かつてANAJALの後ろを追ひかけるといふ構図であつた。揺れの小さな高度、空港カウンターなどのベスト・ポジシオンはJALに独占されてANAは遠くに追ひやられてゐた。時代が変わりJALは経営再建中の体たらく。JALの遥か前方を飛ぶやうになつたANAとしては自社が羽田一番機を飛ばすに相応しいと考へたのだとしても無理はない。これはラジオからの伝聞なのだが、(元CAの話で、彼女も未確認情報だと断つてゐた)ANAJALに対するライバル心は相当なものだつたらしい。飛行中、ANAの機長が「ご搭乗の皆様、左前方をご覧下さい。JAL機が飛んでをります。今から当機が抜きます!」といつたやうなアナウンスをしたとかしないとか。真偽はともかく面白いエピソードである。今であれ大問題なのだらうが、昔はこんなことも許されるゆるさがあつたのだらう。さて、名誉の一番機を飛ばしたJALは安全面で度々問題を起こしてきた会社である。一番だ二番だといふ小事よりももつと大事なことに心を砕いて頑張つてほしい。