人を暴走させないために

中華人民共和国の船が海保の船に衝突した映像が流出したのが問題となつてゐるが、巷間では「よくやつた」との声もあればその反対もあり、賛否両論渦巻いてゐる。この問題をどの角度からどのやうに見るかで評価は分かれるのだらうが、公務員の守秘義務違反を問ふ場合、守秘するだけの根拠、価値がこの映像にあつたかどうかが問題視されるといふ話があつた。僕なぞは頭が固い方なので、根拠だの価値だのの話ではなく、上が駄目と決めたのだから駄目なのだらうと思つてしまう。だから政府の管理能力が云々といつた批判には相槌を打つてしまうのだ。政府与党を弁護する気はさらさらないが、実はこのやうに公務員が政府の持つ手綱を放れて勝手に走り出してしまう雰囲気、土壌は以前から在つた。新しくは論文で話題になつた田母神氏も在職中にかなり自説を展開した。それは必ずしも現行の自衛隊の在り方、国防に対する姿勢を肯定するものではなかつた。むしろ政府への叱咤激励と言ふよりも批判に近いものだつた。確かこのブログでもシビリアン・コントロールが崩壊しつつある〜旨の事を書いた記憶がある。現場の人間には現場を知つてゐるからこその意見があるのは当然であらう。現場では政治家などには想像も出来ないやうな切羽詰つた状況もあるだらう。仕事に熱心で正義感に溢れる公務員が世に知らしめて民意を問ふ、と思つたとしても気持ちは理解出来る部分がある。今回の場合、流出させた本人は職を辞す覚悟もあつたと聞く。彼がした行為については法的に粛々と精査し、判断するのは法治国家のとるべき姿勢なのだらうが、彼をさうさせてしまつた状況についても謙虚な気持ちで精査する必要があるのではないだらうか。今回の場合はたまたま彼だつただけなのか、それとも誰もが同じことをする可能性があつたのだらうか。どの役所でもこのやうな状況なのだらうか。だとしたら管理能力とかの問題ではなく、組織としてガタがきてゐるといふことにならないか。