天狗裁き


夢といふのは不思議なもので目が覚めた直後は覚へてゐるのに1時間もすれば内容や見たことすらすつかり忘れてしまつたりする。落語の「天狗裁き」はそんな夢の話である。転寝をする良人がなにやら夢を見てゐるらしく、ニヤニヤしたりする姿を見た女房がどんな夢を見たのか尋ねる。良人は夢を見たことさへ忘れてしまつてゐるので夢なんぞ見てないと言う。女房はだうしてもそれを信じない。挙句に隠し事ばかりするだの薄情者だのと喧嘩になり、殺せ、殺すぞと大声を張り上げる始末。それを聞きつけた隣人の男が仲裁に入り、その場は収まるのだが、今度は女房には言へないことでも男同士ならば言へるだらうと夢の内容を聞き出さうとする。そこで夢なんぞ見てないと答へて教えろ、見てないの掛け合ひで喧嘩になる。そこへ大家が尋ねてきて二人の仲裁に入り、その場は収り・・・。ところが大家も夢のことを聞き出さうと言へ、言はぬの押し問答。業を煮やした大家は出て行け、行かぬの大喧嘩になり大家は奉行所に訴へる始末。奉行所ではお上が大家の言ひ分を認めず反対に大家を叱る。然し今度は奉行がどんな夢なのかを尋ねる。言わぬなら死罪だと脅かされそこへ天狗が飛んで来て・・・。結局それも夢だつたといふ落ちである。
画像:Sony Nex5 Elmar5 3.5