ほんの少しの希望

此処のところ動物に関する厭なニユースが多い。針金を胴体に巻かれた犬、腹にボーガンの矢が突き刺さつた鹿、角を折られた山羊、そして今度は荼毘にふされた筈のペツトの死体遺棄。100匹近くと大量であることから恐らくはペツト葬祭業者の犯行と思はれる。何とも腹立たしく心の痛む事件である。大袈裟ではなくこの国に、そして人間に失望するやうな出来事である。この件に関して世の中のありとあらゆる罵詈雑言を持つてして糾弾したいのだが、敢えてそれをせず一つの美しい話を紹介する。タイムリーでなく有名な話なので知つてゐる方も多いと思うがアビーといふ犬の話である。

 先月の8月23日に我が家の14歳になる老犬アビーが亡くなりました。翌日私の4歳の娘のメレディスは泣き続けました。メレディスは私に「アビーが天国 に着ひた時ちやんと気付ひてくれるやうに神様に手紙を書きたい」と言ひました。私は彼女の言葉を書き留めました。
 神様へ
 私達のアビーを特別に大切にしてあげてもらへませんか
 アビーは昨日死んで今は天国にゐる筈です
 私はとても寂しいです
 病気の犬でしたがあなたが私達にアビーを授けてくれてとても幸せでした
 あなたがアビーと遊んでくれたら嬉しいです
 アビーは病気になる前はボール遊びや泳ぐことが大好きな犬でした
 あなたがアビーを見つけてくれるやうに写真を送ります
 
 あなたを愛してゐます
 
 メレディス・クレア

 追伸
 メレディスが言つた事をママが書きました

 アビーの写真を2枚封筒に入れ、宛先には[神様/天国]と書き投函しました
 そして宛所不明で送り返されてくるであらう自宅の住所を書きました
 メレディスは表に切手を何枚も貼りました
 (天国まで届けるには沢山の切手を貼らなければならなゐさうです)

 数日後、金色の紙で包まれた小包が届きました
 それには金色のお星様のカードが添へられ
 「メレディスへ」とありました

 彼女はそれを開けてみました
 中には「ペツトが死んだ時」といふ本がありました
 本の表紙を開くと私達が書ひた手紙がテープで張られてをり、宛先不明のため差出人に返送のスタンプが押されてゐました
 隣のページには「メレディスへ」といふ言葉の下にアビーの写真がありました
 裏表紙を捲つてみるとアビーの写真とピンク色の紙が挟まれてゐました
 手書きのその紙には

 メレディス
 
 アビーは無事に天国に着きました
 写真のお陰ですぐにアビーが分かりました
 メレディス
 アビーはもう病気ではありません
 元気に走り回つてゐます
 アビーはあなたの犬だつたことをとても喜んでゐます
 手紙と写真はあなたにお返しします
 これからもアビーのことを思ひ出してあげて下さい
 本は天使が用意してくれたものです
 きつとあなたの役に立つことでしよう

 手紙を送つてくれたママにはちやんとお礼を言つて下さい

 追伸
 神様が言つた事を天使が書きました

 (以下、省略)
 
 この話で多くの人がほんの少しでも希望が持てたらと祈ります。