粋と野暮

元々僕はそばやうどんなどの麺類が好きで良く食べる。今夏は異常な暑さも手伝つて昼食がほとんどつけうどんやもりそば、冷やし中華だつた。男の昼飯だから店に入つてから出るまでの時間は短い。だが、この短い時間に耐へ難い災難に遭遇する事が多々ある。他の客が出すうどんやそばを食べる時の音である。そばはずずずぅつと啜つて食べるのが粋だとか正式だといふ話もある。だが、この粋といふのが難しく、やりすぎると野暮になる。野暮は他人を不快にさせる。和服の着こなしでも丁度いいくらひに襟が抜けていれば粋だが、それを越へるとだらしなくしか見えない。事の真偽は定かでないが、だうも音をたててそばを食べるといふのは落語から来ているらしい。時そばの中でそばを食べる場面で落語家が大袈裟に模写したのが受けて広まつたやうだ。実際の江戸つ子はわざわざ大きな音を立てて食べるなんてことはなたつたといふ。前にも書いたが僕はだうも音には敏感な性質のやうで、野暮人のそばを食べる時の大きな音がすこぶる不快に感じるのだ。今日の昼飯もきつとそばかうどんになるだらう。だうか今日はそんな人に遭遇しませんやうにと祈るばかりである。