気仙沼の今 Ⅱ


被災地のある飲食店で聞いた話になる。そのお店は地震津波による被害が少なく済んだ。客数は激減したものの、踏ん張つて営業し、売り上げを貯め込むことをせず、少しでも他の人の役に立てばとの思ひから店の改修などをしてゐるのだと言ふ。然しながらそんな善意も、甚大な被害を受けた人からするとすんなりと受け止められないこともあるらしい。詳しくは話さなかつたが、陰口などを言ふ人があるやうだ。住む所さへ失つた人にしてみれば余裕があるやうに見へるのかも知れない。あの日以来、絆といふ言葉が頻繁に使はれるが、その糸が綻び始めてゐる場所もあることを知つた。