たかが虫、されど虫

どんなものにでも理があつて、それ故に深くも面白くもある。ひよんなことから
始まつたコクワガタの飼育も同じだ。いい年ぶらさげたおつさんがクワガタなんぞに夢中になつてゐる姿はきつと滑稽に違ひない。だが、これはこれで生半可が許されないのだ。温度、湿度の管理、餌だつて最初に買つた百円のものから高級品まで幅がある。産卵用の材だつて買つてきたものをそのままマツトの中に埋めれるだけではない。一日ほど水の中に沈めてから水から上げ、木の皮を剥き一日ほど陰干しする。この皮を剥く作業は自然界ならばメスクワガタの仕事なのだが
これをさせるとかなりの体力を消耗させることになる。それでその仕事を人間が
やることになる。出来るだけいい状態で産卵させてやることが望ましいのは言ふまでもない。こんなことを話し出せばキリがない。たかが虫、されど虫なのだ。