ピスト・バイクに恐れ入る

狭山湖でチネリのピスト・バイクを駆る人と出会つてからといふもの連日のやうにネツトでピスト・バイクについて検索してゐる。ど素人である僕には同じ自転車といふ括りでありながらロードやマウンテンなどとピストがまるで違ふ事に驚かされる。ネツトに書かれてゐる事の中にもまるで正反対の意見があつたりする。例へば「ピストは危ない」に対し、「慣れればピストは普通の自転車よりも安全だ」なんて意見もある。これは理解していけば危ないといふことも安全だといふことも分かるのだが、そこに行き着くまでは頭がこんがらがる。自転車が車やオートバイに対してよりエコであることは議論を待たないだらう。だが、ロードやマウンテン対ピストはどちらがより自然かと聞かれると首を傾げてしまふ。この問題は一体何を尋ねてゐるのだらうか。どちらとも答へることは出来るのだが何れにしろ理由が分からない。僕の知つてゐる自転車はペダルを前に踏めば自転車が進むといふものである。ペダルを逆周りさせたり、踏むのをやめたら自転車は惰性で前に進む。きつと多くの人が同じだらう。だが、ピストは違ふ。(ここで言うピストとは固定ギアのものでフリーのシングル・ギアのものを除く)ピストはペダルを逆周りさせれば自転車はバツクするし、踏むのを止めることが出来るのは停止した時だけである。坂道を登る時は勿論ペダルを踏むが、坂道を下る時もペダルを漕ぐのである。自転車にとつてペダルを漕いでないのに自転車が惰性で進むのは不自然であり、上り坂を軽いギアを使つて軽い力で登つていけるのは不自然なのだ、と言はれると今までの僕の知つてゐる自転車観みたいなものは瓦解してしまふのだ。ピストは人が五感を使つて路面状況、交通状況などを知り、その情報を基に運転するものであるらしい。自らの運転技術、限界を知らなければ事故が起こる。逆に熟知してゐれば死ぬつもりでもない限り安全に乗ることが出来る。僕が自転車を買つたお店の人もいつだつたか「今の自転車業界は、昨日自動車免許を取つた人でもお金さへ出せばF1カーでも買ふ事が出来る。乗りこなせるかだうかは別だが・・・」と車に例へて言つた。ママチャリはあまりにも手軽な乗り物だが、スポーツ・バイクとなると実は交通法規だけでなく相当のスキルと知識を必要とする乗り物なのだ。ピスト・バイクは特にその辺がシビアで気が小さく、努力や勉強が苦手な僕は少し怯んでしまふのだつた。