ピスト 生きてゐる

僕にピストの魅力を教へてくれたチネリの人と以前メールでやり取りした時のこと。僕がピストを始め幾台かの自転車を所有してゐる旨を伝へたら笑顔で(メールで何故笑顔なのかは文脈から判断しました)「浮気性ですね」と言はれた。あの当時はピスト以外は金輪際乗らない、などと生意気なことを言つてしまつた。ところが今はママチヤリ、ピスト、ロードと用途や気分によつて乗り分けてゐる。僕は自転車はストイツクなものだと思つてゐるので大勢で走ることはしない。勿体付けた言ひ方をしたが、実は子供の頃から集団行動が苦手といふのが実際のところで前述したのはただの言ひ訳である。自転車の楽しみ方として仲間との走りはきつと楽しいのだらうからある意味僕は自らその楽しみ方をスポイルしてゐるのだ。まあ、一人でも十分楽しいし、走りながら見るもの、感じるもの、考える事は結構楽しく、今のところ不満もないのでこれでいいのだらう。さて、ピストの話に戻ることにする。僕にとつてピストの魅力は何か。いくつもある中で一番はダイレクト感だ。これは他の自転車と決定的に違ふと思ふ。多段ギアの自転車よりも緊張感があり、僕はピストに乗つてゐる瞬間に大袈裟な言ひ方をすれば生きてゐると実感する。生きてゐる。あまりに当たり前なことを普段の生活の中で感じることつてなかなかないものです。