シルバーカーはスーパーかーの夢をみるか?

タイトルはあの名作「ブレード・ランナー」の原作となつた「アンドロイドは電気羊の夢をみるか」のパクリである。
当初はB級映画として一部のマニアには受けたもののそれほどの興行成績は残せなかつたと聞く。ところが次第に評価が上がりキユーブリツクの「2001年宇宙の旅」には及ばないにしてもSF映画の中では記憶に残る作品として上位にランク・インする。映画の話はさておきタイトルの話に戻る。僕はF市にある事務所で一日の1/3を過ごす。隣のK市からこの地に移つてきて10年経つ。初めの頃もこの地には随分と驚かされた。まず物価が異常と思へるほど安かつた。家賃などは他とそれほど違ひはないのだが、食料品や生活用品の物価が安いのである。ある店でTシヤツ一枚が五百円で売られてゐるのを見て仰天したものだが、すぐ近くの別の店では3枚五百円といふところがあり、最安値は一枚百円の店があつた。商店だけでなく、ここに住む人々にも何度となく驚かされた。ある時は僕の目の前にいきなり自転車のオバチヤンが急ブレーキで停まり「タバコ一本くれ」と言はれて面食らつたことがある。その他、びつくりする話は枚挙にいとまがないのだが、今日の話は駅近くの交差点でのこと。そこは十字路で主人公は一方通行の道路の真ん中をシルバーカーを押しながら交差点に近づいて来た。右に曲がるとその100メートル先には踏切がある。主人公の前にはミニバンがあつて右に曲がるべく信号待ちしてゐた。シルバーカーもその車の後ろで信号が青に変はるのを待つ。その様子はボブスレーの選手がスタートを待つ姿とだぶる。普通だつたら歩行者なのだから路肩に寄つて前に出ればいいのだが、何故かさうしない。しばらくして信号が青になつたのだが、右折したいミニバンは先が詰まつてゐて右折出来ずにゐた。するとかの人は「早く行けよ!」と大声を出しながらやつと動いたミニバンの横をすり抜け車道を悠々と直進して行つた。その光景を目撃した僕はシルバーカーは果たして車両なのか?と馬鹿なことを自問自答してしまつた。