ストレス

ストレスの時代だと言はれて久しい。一口にストレスといつても種類も質も様々だ。ストレスは大概悪者扱いだ。ストレスのない生活をとか、ストレスをためないやうにとか言ふが、実際問題ストレスは多くの場合自分達で作り出してゐる気がする。例えば国民の数以上ある携帯電話がそれだ。こんなものが無い時代は電話が通じないからといつてこれほどイライラすることは無かつた。電話に出なければ「何処かに行つたのだらう」で納得したものだ。悪くて「何処をほつつき歩いてゐるんだらう」がいいところだ。ところが、これが携帯電話だと「何で出ない」「何やつてるんだ」とトーンが上がる。出ないことが悪いかのやうだ。だが、少し考へてみれば逆である。電話をかける方は自分の都合だけでかけてくる。だが、受ける方はバスや電車の公共交通機関で移動中のこともあれば病院に居ることだつてある。相手の都合などお構ひなしだ。電話に出ない方が悪いのではなく、出られない状況にかけてくる奴が悪いとも言へるのだ。何時、何処であつても通話出来るのが当たり前といふ世の中であれば通じないことがストレスになる。携帯の利便性は否定しないが、きつとこの機器が無くなれば世界中に蔓延するかなりのストレスが無くなることだらう。