ダブリンの鐘つきカビ人間

 タイトルにある『ダブリンの鐘つきカビ人間』を観たことがある。実にいい演劇だつた。
不思議な病に冒された女性は、醜いカビ人間に心惹かれてしまふのだが、その気持ちを告げやうとするとまるで反対の言葉になつてしまふ。 好きと言ひたいのに口から出る言葉は嫌ひになつてしまふ。さて、先日までこの病に罹患してゐた方が全快したやうである。やつと心に思つた
ことをそのままの形で口にすることが出来た。『頭に来たから言つた』。がそれである。然し、ここでまた問題である。この『頭に来たから言つた』を『頭に来たからやつた』や『むしやくしやしてやつた』に置換するとだうだらう。痴漢や通り魔、放火犯などは大体こんな言ひ訳をする。まさか彼らを同じではないでせうね?