Nikon 35Ti


かつて高級コンパクトカメラというカテゴリーが存在した時期があった。一番力を入れたのは今はなきコンタックスだった。単焦点のT、T2、T3、ズームを搭載したTVSTVSⅡ、TVSⅢなどカール・ツァイス・レンズを奢ったカメラとしてもモノとしても贅を尽くしたカメラを発売した。対するニコンは35Ti、28Tiをこのカテゴリーに放った。画像は35Tiである。頭の数字は35mmレンズを表しTiはチタンを意味している。35も28も軍艦部にアナログ式のメーターを配している。このデザインは賛否両論あるだろうが僕は気に入っている。矛盾する言い方だがアナログで育った世代の人間は数字の捉え方が点ではなく面や量である。今の時代カメラをはじめ殆どの電子機器はデジタル表示だ。いいこともあるが困ることもある。例えばデジタル表示の時計の数字を一度頭に入れてからアナログに変換するという作業を無意識にしているように思う。僕にはこのカメラの表示方式は感覚的にすんなり受け入れられるのだ。僕が最初に手にしたカメラはオリンパスOM-1だが、このカメラの露出計の表示方法は追針式と呼ばれるものだった。キャノンF1もニコンFもそうだった。その後表示方法はLEDなどを使った方式になったり液晶表示になったりしていくのだが、正確さはともかく僕には今でも追針式の露出計が一番馴染むのだ。さてこの35Tiだが、ひとつありがた迷惑な部分がある。優秀すぎて?一定のシャッター速度以下になると内蔵ストロボが勝手に発光してしまうのだ。カスタム・ファンクション機能で発光禁止に出来るのだがこれだと必要な時にも発光しない。その都度解除したり設定したりする面倒がある。何年か前までニコンのサービス・センターで28Tiと同じような方式に改造してくれていたのだが今ではそのサービスはやっていない。僕の35Tiもいつか改造しようと思っていたのだがその機会を失してしまった。このまま生まれたままの姿でいることを本人(本機)が望んでいたのかも知れない。