マスク

最近のテレビCMでどうにも気に入らないものがある。自動車メーカーT社の子供店長のCMである。小生意気なガキが、いや変に大人びて賢そうなお子さんが出ているあれである。声もしゃべり方も生理的に受け付けないのだがこれは個人の感覚によって賛否両論あるだろう。だが僕が面白くないのは他にもある。自動車という高額な大人の道具が子供に宣伝されるのが先ず不愉快なのだ。子供服や子供の好きなお菓子などのCMに子供が起用されるのは納得がいく。思えば自動車の車種も随分と様変わりしたように思う。スポーツカーといわれるものが極端に減った。それに代わって子供最優先とも思える仕様の車ばかりになった。親が子供の事を考えるのは悪いことではない。だがこの消費傾向を考えてみると家庭の中でパパはずっとパパのままで男性である時間がない、或いは男性であることを許されない世の中になってきてはいないだろうかと思う。人は場面によって幾つもの顔を持つ。パパの時、男の時、社会人、会社人、店主、先生など人によりその時その時それなりの顔になり気持ちを切り替えて生きてきたのではないだろうか。では今の世の中はどうだろうか。誰もがたった一枚のマスクで通し続けなければならない風潮になってきていないか。表と裏というと印象が悪いが人にはそういう部分があって当然だと思う。逆になければかなり苦しい生き方になってしまう。不謹慎な言い方になるが、人生が演劇だとしたら楽屋に戻ることなく舞台で演じ続けることはハードなことだ。家庭の中において男であり、パパであり、夫であるという最低三枚のマスクは必要だと僕は感じているのだがどうもパパだけのオンリー・ワンのように見える。車の事に話を戻すと、多少使い勝手が悪かったり、窮屈だったりしても子供にスポーツカーのカッコ良さ、速さや楽しさを教えてやるのも無駄ではないと思うのだが・・・。