UNFOGETTABLE

「火事になったら、
一枚のレンブラントより一匹の猫を救おう
そしてその後で、その猫を放してやろう」
by アルベルト・ジャコメッティ

この言葉を知ったのは小学校の卒業文集だったろうか。U先生という美術の好きな先生が教えてくれた言葉だ。彼はこの言葉から僕らに何を考えさせようとしたのか。絵よりも命の方が大切だという解釈は当時でも出来たがどうもそれだけでは単純すぎる。ずっと分からないまま、考えないまま過ごしてきた。だが、不思議とこの言葉を忘れることはなかった。正直言って今でもよく分からない。「絵よりも命の方が大切だ」から「芸術よりも人生だ」に言葉が変わったくらいである。教師という職業の人が僕らに教えたかったのは「勉強よりも生きる身につけろ」だったのかなと分からないままに考えてみた。実際僕らの学年の誰一人としてU先生から授業を受けたことは無い。勉学を僕らに授ける機会を得なかった彼はその後何十年と引きずる課題を僕に与えた。