どれも同じ顔

中学生の頃、新聞配達のアルバイトをしてゐた。そこにOさんとSさんがゐた。SさんはヤマハのTX-650に乗り、Oさんはスズキのハスラー400が愛車だつた。後にOさんはハスラーを所有したままTX-650を買つた。僕は特にOさんに可愛がられた。夕刊の無い日曜日には配達が終わつてからOさんの運転するTXの後ろに乗り奥多摩などによく出かけた。大排気量のツイン・エンジンの鼓動を体に感じながら朝のひんやりとした空気、風を切る音、太い低音の排気音を心地よく思つた。学校に行けば級友達とあれがいいだのこれがいいだのとバイクの話に花を咲かせた。年齢的にも経済的にもバイクには乗れない僕等ではあつたが近所のバイク屋のオヤジは厭な顔せずにカタログを分けてくれたものだつた。
僕等がバイクに乗る頃には名車HONDA CB-400Fourが生産終了になつてをり、後継車としてHAWK?といふヤカンタンクに座布団シートのバイクが発売された。僕はヤマハのSR400を買い、友人はホーク?、スズキのGS400を買つた。僕がヤマハを贔屓にしてゐるのはOさんやSさんの影響もあつたからだらう。それに車のデザインもヤマハが一番好きだつた。だが、最近の国産車はどれも同じやうなデザインばかりといつた気がする。一時期のカウルだらけのガンダムのやうなものは減つたやうだが、それでも外国の車には到底敵わない。特にイタリアのものは個性的で、エレガントである。新しく、それでいて何年経つても古くならないデザインの車は国産では無理なのだらうか。ずつと同じデザインのものといふと真つ先にホンダのカブが浮かぶのだがそれだけでは少し淋し過ぎる気がするのだ。何故ならカブはデザインよりも実用を評価されてのものだからだ。