むかし、むかし(時計:ロンジン)

表題の通り、昔の話なので記憶も曖昧なのだが、僕が初めて買つた時計はロンジンだつたと思ふ。正確には学生時代に手巻きのミツキー時計辺りが最初なのだらうが、オモチヤではないものはロンジンが最初であつた。勤め始めて間もなく野頃、池袋の大丸質店(今でも営業してゐるやうだ)のシヨー・ウインドーに陳列してある様々な時計を見るのが好きで仕事帰りにはよく立ち寄つたものである。店は繁華街の狭い路地にあつて辺りは怪しい雰囲気の店や人が多い場所だつた。
そんな雑多な場所の店舗であるから商品の並べ方も雑である。ある程度の高級品は良く見へるやうに工夫してあるやうだが、それ以外は2つ、3つと重ねられて正札が見へるだけで商品がまるで見へないなんてことはざらであつた。そのやうな状態の中から探し出したのがロンジンのオートマチツクだつた。フラツグシツプといふネーミングだつたと思ふ。この機種はインデツクスに幾つか種類があつたやうだが、僕の買つたものはローマ数字、カレンダーなしのものだつた。バンドは黒の型押しで社外品だつたが、尾錠はオリジナルかどうかは分からないがロンジンのものだつた。とても作りが良く、文字盤の羽根のやうなマークも彫刻したものだつたし、竜頭もさうだつた。たまたま僕のものが当たりだつたのか、精度も素晴らしく月差は1分以下だつた。初めて買つた時計がロンジンだつた所為か僕は今でもロンジンの時計が好きで手巻きとクオーツのものを持つてゐる。