鍋の季節


寒くなつてくると鍋物が食べたくなる、なんて言葉をよく聞く。然しながら実は僕はあまり鍋物が好きではない。お酒を飲みながら鍋をつつく絵は良いものだとは思ふのだが、下戸なのでその習慣がない。きつと偏見なのだらうが、鍋はご飯のおかずにそぐはない気がするのだ。これはイメージだけの話しではなく、一応実体験に基づく感想である。キムチ鍋、水炊き、ちやんこ等の鍋の代表格とされるものを試してみた上での話である。鍋の中に色々な食材が入つてゐるのは嬉しいのだが、これがお椀に分けられると急に淋しくなる。これは僕の貧乏性によるものである。箸の移動範囲がご飯、お椀の二点に限定される。漬物でもあれば都合三点にはなるが鍋、ご飯、漬物のトライアングルは僕にとつて味噌汁、ご飯、漬物とあまり変らない。鍋は僕にとつてどちらかと言へば汁物的な存在なのである。量は少しでも品数が多い方が何だか嬉しいのだ。ところで先日聞きかじつた話だが、ちやんこ鍋に入れる肉は鶏肉ださうである。豚や牛の四足は土俵に手が着いた姿に似てをり、縁起が悪いので嫌はれるさうである。★画像は近所の自然公園に住む捨てられたネコ★