勤労感謝の日に思ふ

今の時代、非正規雇用といふ形態で働く人の割合がかなり多い。それでも仕事があるだけまだましな方なのかもしれない。大学を出たものの就職出来ずに困つてゐる新卒者も多いと聞く。こんな経済状況だと勤労感謝の日は働き口がある人はそのことに感謝し、仕事の無い人は仕事のある人を恨む日になるかもしれない。勿論、仕事が無い怨みを仕事のある人にぶつけてみても始まらない。だが、人間といふものは自分よりも良い状況にある様に見える他人に対してやつかんだりするものである。社会や経済といつた見え難いモノより具体的で身近なものの方が分かりやすい。それ故に攻撃、嫉妬などの感情をぶつける標的は概念ではなく生身の人間になる。自分のパンの量が少ないのはあいつが多く食べたからだ、といつたやうに思つてしまつたりするのだ。これは間違つた考へではあるが、だからといつてその責を間違つた個人にばかり求めるのもいささか問題が残る。全ての人を救済する大きなネツトはない。だが理想は持つべきだし、人はそれに向かつて何かをするべきだらう。怨んだりやつかんだりする人が多ければ多いほどその国は何かが病んでゐるのだ。