FRIEND

友達がいる。友達がいない。友達が多い。友達が少ない。昔、友達って何だろうと考えたことがある。友達とは?という理屈付けをしてみたのだ。一緒に飲んだり、遊んだりする仲間を友達とする人もいれば、友達という立場についてもっと厳しい定義なり、条件をつける人もいるだろう。僕の場合、結局考えても分からなかった。佐藤春夫の短編のなかに友達について書かれたものがある。小学校だか、中学校だかでの出来事。各々が自分の友達の名前を書いて提出するという話だ。僕は君の名前を書くから、君は僕の名前を書いてくれなどという談合は出来ず、誰が誰の名前を書いたかは分からない。主人公はクラスのある子に「君は誰の名前を書いた?」と訊かれる。「君の名前を書いた」と告げる。実際主人公は彼の名前を書いていた。そう告げられた彼は「君の名前を書かなかった。○○の名前を書いた」と正直に言う。この答えを聞いて、主人公は自分の友達は彼だと確信する。うろ覚えだが内容はそんな感じだったと思う。文章が稚拙ゆえにうまく伝わらないのがもどかしいが、情感たっぷりに表現された名文だった。お笑いのビートたけしは言う。友達が金に困る。自分のところへ金の無心に来る。彼はこの時点で友達ではなくなると言う。自分のところに姿を見せなくなり、誰かからの噂で「○○はずいぶん金に困っているらしい。それで最近全然姿を見せないらしい」という話を耳にすればいくらでも持って自分から行く。自分に心配かけまいとして姿を見せなかった奴は友達なのだという。友達について二つの話を紹介した。友達って何だろうという自分に対する問いかけは未だに答えを見出せていない。