聞く耳持たず

話の流れを汲み取らずに言葉尻を摑まへて寄つて集つて叩くマスコミのやり口は好きではないが、鳩山元首相の「国民が聞く耳を持たず〜」の件はさすがに聞き流すことは出来ない。さんざん目新しい事を言つておきながら口ばかりで殆どの事が実現されなかつた。寄席で言ふならお題を掲げたものの芸がまるでなつてなかつたといつたところだらう。国民が聞く耳を持たなくなるのも当然だらう。林家こぶ平が二枚目から真打になる時のエピソードにこんなものがある。席亭が彼の母親に「そろそろいいのではないですか」と耳打ちしたところ彼女は「いえ、いえまだまだです」と応へた。それに対して客席を見ながら「だいぶ背が離れてきましたよ」と教へたと言ふ。背が離れたとは客が椅子から背を離して食い入るやうになつたといふ意味である。鳩山元首相の場合、襲名披露で大いに盛り上がつたのだが、その後高座に上がるにつれ客が減り、背もたれから背が離れることがなかつた。いや、最後の高座で「辞任」のお題を掲げた時だけは背が離れたのかもしれない。